がん幹細胞とは
がん幹細胞とは、がん細胞のうち、幹細胞の性質を持った細胞で、がん細胞を次々と生み出す性質を持っており、がん細胞の親玉とも言われています。がん幹細胞には抗がん剤が効かないため、がん幹細胞は、一度は完治したはずの癌が再発したり、癌が転移したりする原因であるとみられています。
幹細胞そのものは、皮膚や腸など生物の通常の細胞にも存在しており、分裂したときに、ひとつは自分と同じ細胞(自己複製能力)、もうひとつは自分と違う細胞をそれぞれ作る能力を備えています。
このような分裂の仕方を「非対称性細胞分裂」と呼び、ひとつは分裂周期が遅く、もう一方は分裂周期が速いという性質を有しています。
がん幹細胞の発見
がん幹細胞は、1997年にカナダで白血病研究を通じて初めて発見され、その後、2003年に乳がんでも発見されました。日本で最初にがん幹細胞を発見したのは、大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学の森正樹教授で、2005年に肝臓のがん幹細胞を発見し、その後、続けて食道、胃のがん幹細胞も発見しています。
がん幹細胞は、がん組織中に、約1%かそれ以下の割合で含まれており、環境の変化にも強く、体内を移動してゆっくり分裂し、がんを巨大化させます。
放射線治療や抗がん剤でがん細胞を退治しても、がん幹細胞が体内に残っていれば、癌は再発します。
このがん幹細胞を退治することができれば、がん患者の5年生存率が向上することは確実なのです。
しかし、がん幹細胞は通常はじっとしており、早いものでも数日に1回程度しか活動しないため、がん幹細胞が動き出すタイミングを予測することは、現時点の研究レベルではまだ難しく、今後のがん幹細胞研究の進展が待たれるところです。